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【小説】雨上がりの空にかかる虹の下で プロローグ6

宗司と沙亜子は1月8日に出会ってから、毎日LINEでのやり取りをしていた。今日までたった4日しか経っていないにも関わらず、二人の会話が止むことはなく、宗司は沙亜子との会話が楽しくてしかたなかった。そんな折に、、、

沙亜子「近々カフェに遊びに行ってもいいですか?」

沙亜子から、宗司の母の営むカフェに行きたいとLINEが入り、宗司は喜んだ。嬉しかったけれど、ガツガツしている感じを出すのも恥ずかしかったので、「店には母しかいないけど、全然イイですよ!」なんて返した。だけど、ほんとはご一緒したくてたまらなかった。

沙亜子は、そんな宗司の心中を察したのか、「そこは宗司さんも一緒にお茶しましょうよ」と返してくれた。

うん、そりゃそうだ。沙亜子がカフェに行きたいのも本心だろうけど、宗司と会いたいというのも本心。それは分かっているくせに、宗司はすぐに素直になれなかったが、少しやり取りをした後に、

宗司「滋賀観光されるなら丸々ご一緒しますよ」

とデートに誘った。随分、遠回しだし、なんだか建前で塗り固められたような言い方だけれど。本来は「ご一緒していいですか?」か「ご一緒させてください」が正しいのだが、この頃の宗司はひねくれていたので仕方なかった。

そして、二人がはじめて会う日も1月19日と決まった。

その日は、宗司も一日予定がなかったし、沙亜子をどこに連れていけば良いか考えること自体を楽しむことにした。一緒に行きたい場所はいくつもある。

この日のLINEは深夜1時半まで続いた。

翌日も同じように二人の会話は続く。他愛もないことから、肉体関係のことまで、話す内容も次第に親密さを深めていっていた。

沙亜子「私は愛知もうお腹いっぱいです」
宗司「んじゃ、滋賀来ますか?」
沙亜子「リアルに移住は考えてるので、滋賀は候補になりました」

なんて、二人はお付き合いをしているのですか?みたいな会話までし始めた。宗司はもう胸が幸せでいっぱい。沙亜子とは、ところどころ共感すべき点が多く、またhideが好きなど共通点も多かったこともあり、宗司にとって、沙亜子はすでに特別な存在だった。

いや、というよりも、アプリではじめて写真を見た瞬間からの想いが、日を追うごとに確信へと変わっていったという方が正しいだろう。

そんなやり取りの中、沙亜子は、宗司の離婚や養育費の話なども聞いてきた。宗司にとってはネガティブな思い出でもある。さらに、今の自分は以前よりも甲斐性もないので、手痛い質問でもあった。だけど、見栄を張る必要もない。隠した方が、嘘を重ねることになる。宗司は、今の自分の環境や離婚のことを簡単ではあるが伝えることにした。

宗司は、今の自分は、結婚生活から解放され、自分らしく生きられていると思っていた。そんな自分の生活に満足もしていた。もちろん、まだ不足している点はあるけれど、なんとなく自分は幸せな人間で、不幸などないと考えていた。もちろん、それはあまりにも自分のことを知らないだけなのだが、それはまたこの先に宗司自身が気付き、苦悩することになる。だけど、これはまだ少し先のお話。

宗司と沙亜子は、会う日までたくさんのことを話した。この先の恋愛観や結婚観、なんなら写真に一目惚れしていることまで伝えていた。中学生や高校生じゃあるまいし、こういったことを事前に伝えるのも大人の恋愛なのかも知れないが、それほどお互いに楽しい時間を過ごしていたことは、2人のLINEでのやりとりの多さが物語っている。

沙亜子「宗司さん、Youtubeに本腰入れたいいと思う。そのためには今の既存の仕事手放す必要あると思います。そこが怖ってなって悶絶しどころだと思いますが、手放したら入るが世の真理ですからね(笑)」

沙亜子は、占いやカウセリングをやっていて、人の本質が見えるから、宗司にこんなアドバイスをした。宗司も宗司で「確かに、、、」と聞いただけで怖さに悶絶をしたが、Youtubeかどうかはともかく、自分がしたいこと以外を手放すことができれば、どんなに楽なんだろうと、その先の世界に希望を感じた。

出逢いから、2人が会うまで12日間。2人は、読み返せないくらいのやり取りを重ね、昨日の会話がさも数日前のような錯覚も覚えながら、お互いのことを色々と知っていった。

そして、1月19日当日。

滋賀県は、雪がパラパラと降ったりするが、青空と白い雲が広がる不思議な天気だった。

ここ1週間んで一番寒い日にも関わらず、あまり寒さを感じることもないような、不思議な天気。宗司は、沙亜子との待ち合わせ場所の大津駅まで、電車で移動した。宗司は乗っていた車を離婚の際に手放し、現在は納車待ちだったし、仮に車があったとしても、沙亜子も愛知から車で来るのだから、自ずと電車にはなる。

大津駅で降りて、少し外れた場所でiQOSを空いながら、宗司は沙亜子を待った。

写真では見ているが、どんな表情をする女性なんだろう。どんな声色の女性なんだろう。宗司は、ただただその瞬間を待っていた。

沙亜子は宗司のYoutubeで声を聞いてはいるけれど、宗司は沙亜子の声も知らない。LINEの会話と写真以外、実在する人物なのかも実際に会うまで分からないのだ。

沙亜子「ロータリー的なとこにつきました」

宗司は、少し離れた場所から、彼女の車が通り過ぎるのを見ていた。「やっと会える」そう思うと、車に近づく足取りも自然と軽やかに感じた。やはり自分は沙亜子に恋をしている・・・続く〜。

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