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死にたかったけど、死にたくはなかった

ボクの人生で、最も辛かった3日間のお話。

死にたかったけど、死にたくはなかった

当時、ボクはなんとかして結婚生活を維持したかった。家族四人でずっと一緒にいたかった。だけど、ボクは自分を偽っていたから、何をしてもうまくいかなかった。

仕事があっても、思うように進まない。資金繰りができないから、借金をする。借金で借金を返す。気付けば300万ほどの借金を抱えていた。仕事は入ってくるのに、借金が減ることはなかった。だから、ボクは自分に無理をさせて、大きな案件に携わった。

そんな状態だったから、元妻とはすでに普通に会話できるわけもなかった。まぁ、偽りのボクだったんだから、仕方ない。いつも怖くて仕方なかった。

そして、大きな案件の仕事の負荷に耐えきれなくなった。二つも同時に抱えてしまったことが災いしたのか、どちらにしても無理だったのか、ボクは同時にすべての仕事もできなくなってしまった。

壊れた

その日、京都からの帰路で、運転していたボクの心は突然崩壊した。理由は分からなかったけど、運転しているのに、涙が溢れて止まらなくなった。嗚咽するほどに泣いた。

「終わった」

ボクは自分の中の声を聴いた。ボクの人生はその時終わったのだ。もう、何も考えられなかった。だけど、自分で自分を助けなければいけないとだけ思っていた。

夕方には家の近くに着いていたけど、帰ることはできない。誰とも会えなかった。人が怖かった。すべてが怖くなった。

ただ車の中にいることしかできなかったんだけど、このまま生きていても仕方ないのかなと思った。ボクが生きていることが、家族に迷惑をかけている。仕事先に迷惑をかけている。親兄弟に心配を与えている。そんな自分はいらない。いなくなった方がみんな幸せだと思った。

でも、命を絶つ勇気はない。だから、目の前から消えるしかない。誰もボクのことを知らない場所で、ただただ弱って死ねばいいと思い、車を家の裏の空き地にとめ、スマホも車に置いて、ポストに鍵を返し、着の身着のまま、車に乗っていたわずかな着替えと、少しのお金だけを持って、ボクは現実から逃げた。

家を後にする時、窓から漏れる明かり、中から聴こえてきた子どもたちの笑い声、当たり前だった光景もこれがもう最後なんだと思った。深くお辞儀をして、「ありがとうございました」とつぶやいて、ボクは真っ暗な夏の夜に逃げていった。本当は、ごめんなさいと土下座してでも、家に帰りたかった。すべてを捨てても、絶対に捨ててはいけないものがあったのに、それを捨ててまで、ボクは自分を守ろうと思ったのだろう。クズだから。

本当は死にたくはなかった

何も持たずに歩き彷徨った。寝床はもうない。人っ気のないところにあるベンチで眠ろうと、ひたすらそこを目指した。だけど、神様は許してくれなかった。

ベンチに寝転んだとき、見上げた空には星は見えなかった。夜でも分かるほどに真っ暗な雲だった。そして、ボクは雨に打たれ、ずぶ濡れになった。

傘を買い、仕方なくインターネットカフェに立ち寄り、そこで眠ることにした。もう何も考えらなかった。

翌日は、お昼頃にネカフェを経ち、行く宛もないままに、歩き出した。幸い、空は晴れて、昨日の雨が嘘みたいだった。ただひたすら歩く。車で通り慣れた道も、歩くと長く感じる。8月の終わりの頃だったから、太陽の日差しもきつかった。すべてボクの責任だ。これはボクの業のせいだと思いながら、ひたすら歩き続けた。

その日も夕立にあったため、電車に乗って、少し先の街まで行くことにし、雨上がりの街をまた彷徨っていたが、夜から雨が降ると知っていたので、またネカフェに泊まった。

持っていたカバンに一枚の名刺が入っていた。その名刺を見つけたとき、その人とボクとの共通の知り合いなら、ボクを救けてくれるかも知れないと気付いた。命のホットランで相談を受けている人がいたのだ。ボクは一縷の望みとすがるような思いで、明日にその名刺の人に電話をかけようと考えた。

だけど、翌日になって公衆電話から電話をかけても、今の時代出てくれる人はいない。

ボクは、望みを断たれ、こういう運命だったんだと悟った。

どうせもう何もないならと、ボクは最後の晩餐をした。お金はもうほとんどなかった。

そして、自分の中でこれで終わりだと思っていたので、せめて横になれる場所へと、またネカフェで寝ることにした。もう明日からは屋根のある場所で寝ることはできない。

朝5時。ボクのいた部屋の扉をノックされた。警察署の人だった。

「あぁ、そうか」とボクは安堵した。ボクは死にたいと思いながら、やっぱり死にたくなかったんだ。

ずっと雨が降っていたこと、電話がつながらなかったこと、それは、ボクを遠くまで行かせず、ここに留まらせておくために定められたことだったんだと思った。

その日もひどい雨だった。

ボクが消えた日から、異変に気付いた元妻、連絡を受けた親兄弟たちは、親戚や友だちの手まで借りて、ボクを必死で探していたらしい。極限まで探して、もう手がかりがないと思っていたところで、警察が近辺のネカフェなら手がかりがあるかも知れないと、手を回してくれ、そこにボクがいた。

ちなみに、ボクが抱えていた借金は兄弟が肩代わりしてくれた。今は少しずつだけど返済しているし、もう借金をすることはない。

心が歪んでいると本当の声も歪む

あの頃、ボクは消えたかった。毎日ただそれだけを望んでいた。でも、死にたかったわけじゃないのは、本当のボクが自由を求めていたからだと思う。

そう、ボクはずっと、ただ自由になりたいという自分の本当の声を歪んで聴いていたんだ。

すべてが嘘だったから、本当の声さえも歪んで聴こえていた。だから、ボクにとっては、生きることはツラいだけだった。自分の価値など何もなかった。自分を殺せるならどんなに楽なんだろうと思っていた。

でも、ボクはまだ生きている。世界が素晴らしいと感じながら、生きていられている。あの日、ボクを見つけてくれた日、ボクは生きることが辛かった自分を殺せたと思っている。そして、あの日から本当の自分として生まれ変わるために生きてきた。

ボクが生まれ変わった日

あれから1年7ヶ月が経ち、ボクは、ようやく本当の自分の所在を知った。まだ1歳7ヶ月。ボクはこれからまだまだ成長できる。たくさんの優しさを知り、愛を感じ、世界の美しさに感動できる。

ボクは、昨日までの自分を何一つ恨んではいない。後悔もしていない。殺したなんて書いたけど、むしろ、感謝し、愛している。昨日までのボクが今のボクをボクたらしめている。やはり、ボクはボクであるからこそ、素晴らしいのだ。

ボクの人生で最も辛かった3日間は、産道だったのかも知れない。2019年8月23日、ボクは確かにこの日を境に、生まれ変わった。

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